企業で導入されることの多い「メンター制度」ですが、一体どのような制度なのでしょうか。ここでは、メンター制度を導入するメリットや、各制度との違い、導入方法などについてご紹介します。

 

 

1.【メンター制度】とは

はじめに、メンター制度について詳しくお伝えします。

 

1-1.メンター制度について

メンター制度は、経験豊かな年長者・先輩社員が、新入社員や若手社員、未熟練者と定期的に交流をし、対話や助言によって本人の自発的な成長を支援する制度のことです。メンターは英語の「Mentor」からきており、師匠や助言者という意味を持ちます。サポートする先輩社員のことをメンターと呼び、サポートされる社員をメンティと呼びます。

メンター制度導入の目的は

① 新入社員や異動してきた社員を職場に適応させる

② 自主性を引き出し、成長の実感を持たせることで早期離職を防止し、定着を図る

③ コミュニケーションの活発な職場の人間関係を形成し、組織を活性化する

などがあります。

ただし、企業の方針により、メンターとメンティのかかわりを精神的な支援のみにとどめたり、業務上の問題解決の支援まで行ったりとその形は様々です。

 

1-2.メンター制度と他の制度との違い

 

メンター制度のほかにも支援制度はたくさんありますが、他の制度が新入社員や若手社員を対象としているのに対し、メンター制度は新入社員・若手社員を中心とした全社員を対象としているのが大きな特徴です。

新入・若手社員のみでなく、業務においての未熟練者など支援希望者がメンティとなります。また、ほとんどの制度がメンティに近い同じ部署の先輩社員が支援を行うのに対し、メンター制度では基本的に他部署の年長者・先輩社員がメンターとなります。それはメンティが相談しやすくするための配慮です。メンター制度では実務ではなく主に精神面の支援を行いますので、人間関係などの悩みは同部署の先輩社員では相談しにくいこともあるためです。

 

2.【メンター制度】企業が導入するメリット・デメリット

メンター制度を企業が導入するメリットやデメリットについて見ていきましょう。

 

2-1.メリット

メンター制度導入におけるメリットは、主に下記の5点です。

 

2-1-1.組織内コミュニケーションの活性化

メンター制度では、他部署の先輩社員がメンターになります。業務でほとんど関わることのない、他部署の社員間でコミュニケーションが生まれるため、組織の活性化にも繋がります。また、メンティがいつしか経験を重ねてメンターとなることがあります。このように、メンティがメンターとなり、人とのつながりを形成していくモデルのことを「メンタリングチェーン」と呼びます。

 

2-1-2. メンター職員自身のコネクションが拡がる

コミュニケーションが活発化するだけでなく、自分自身のコネクションができます。縦・横・斜めという身の回りにあるつながりを超えた関係性を構築でき、今後の業務に役立てることができます。

2-1-3. メンター自身の成長とモチベーションアップにつながる

メンター社員はメンティに見られているという意識から、自主的に仕事に取り組み、責任感を持つようになります。また、メンティのキャリア形成の支援をすることで、自分のキャリアを考えるきっかけにもなります。

 

2-1-4.女性の活躍促進サポート

女性のキャリアアップには、妊娠や出産などのライフイベントが大きく関わっており、それに伴う迷いはつきものです。同性のメンターが相談に乗ることで、女性がキャリアビジョンを描きやすくなり、女性の活躍促進に効果が期待できます。また、女性に限らずダイバーシティの観点からも社員の多様性に配慮した支援につなげることができます。

 

2-1-5. 組織風土の醸成(組織の理念、技術、ノウハウの伝承)

メンター制度を導入することで、メンター・メンティ間だけでなく、会社全体に人材育成の重要性を浸透させることができます。支援の中で組織の理念・技術・ノウハウの伝承などを行うことで、組織風土の醸成につながります。

 

2-2.デメリット

メンター制度導入におけるデメリットは、主に下記の3点です。

 

2-2-1.メンターの業務負荷が高くなる

メンターとなる先輩社員は、通常の業務に加えてメンターとしての役割をこなす必要があるため、業務上の負担が増えてしまいます。そのため、メンター選出の際には、メンターだけでなく、その上司とも話し合い、メンターとして行なって欲しいことなどを、あらかじめ決めておくとよいでしょう。

 

2-2-2.メンターの仕事に支障がでるとメンティが考え相談しにくくなる

メンター制度は、メンターとメンティが良好な関係を築くことが重要です。まだお互いの人間関係が構築されていない場合、メンティは多忙なメンターに声をかけるのをはばかられ、進んで相談しにくい状況になることがあります。そのような気持ちを汲みとり、メンターや周りの社員から声掛けをしていくことも必要です。

 

2-2-3.メンターの質のバラつきにより、メンティへの支援の度合いに差がつく

メンターとなる先輩のスキル・知識・人柄によって、メンティの成長にバラつきが出てしまうことがあります。このようなこと防ぐためには、メンターへの事前研修やレクチャーを行い、途中で状況を確認するなどして、メンター任せにならないように注意しましょう。メンター向けのサポート体制を整えることも重要です。

 

3.【メンター制度】導入方法

実際にメンター制度をどのように導入すればよいのか、詳しくお伝えします。

(参考;厚生労働省 「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」)

 

3-1. 目的の設定と運用ルールの決定

メンター制度を導入する前に、まずは導入する目的を明確にしましょう。メンター制度導入の効果をどの側面にフォーカスするかを決めたほうが、具体的な施策に落とし込みやすいです。

目的が決まったら、実施する内容やルールを決めましょう。まずは、目的達成できたかの数値目標(離職率を下げる目的であれば、離職率の推移で目標値を定める)や、実施期間を設定してください。面談頻度や面談時間は自由に設定してかまいません。ただし、守秘義務や相談窓口などについては、事前にしっかりと決めておいてください。あらかじめワークシートを用意しておけば、スムーズに面談ができるでしょう。

 

3-2.対象者を選定とメンター・メンティのマッチング

次にメンター対象者を選定します。メンターは仕事において優秀であったり、コミュニケーション力があるだけでは務まりません。

下記はメンター適任者の特徴です。メンター選定の際に参考にしてください。

・高い能力と実務実績を有し、経験が豊富である

・人材育成の重要性を理解し、育成に熱心である

・仕事の優先順位がつけられ、時間管理ができている

・人として信頼でき、誠実である

メンターが選定出来たらメンティとのマッチングを行います。マッチングを行う際は、事前にメンター・メンティに関する個別の情報をアンケートやヒアリングなどで収集し、ミスマッチを防ぐ必要があります。また、以下の点に気をつけましょう。

・メンター対象者の経歴の中に、メンティのキャリア志向が含まれているか

・メンティの期待とメンターの特性・相性があうか

・メンティ、メンターが直属ライン以外か

・メンティの能力開発ポイントを補強できるメンターであるか

 

3-3.事前研修実施

マッチングができたら実施の前に事前研修を行います。この研修は、メンター制度の意義や目的を正しく理解するとともに、メンタリングを双方にとって満足度の高いものとするために欠かせないものです。事前研修の目的は以下の通りです。

1. 互いの役割や期待、行動を事前に明確にし、誤解や混乱を防ぐ。

2. 効果的なメンタリングとなるよう互いに必要なスキルを身につける。

3. メンタリングを通じて問題が起きた場合の対処方法を理解する。

主な研修内容としては、「メンター制度導入の目的共有」「メンタリングの進め方」「メンタリングの基本スキル」「問題発生時の対処法」などです。

 

3-4.メンタリングの実施・振り返り

ここまで来たらあとは実施のみです。メンタリングの進行は基本的にメンター・メンティ当事者間に委ねられますが、段階に応じて推進部門等のサポートが重要です。

①初期段階 … 制度が導入されメンターとメンティがマッチングされたとき

②深化段階 … メンタリングが実践されて関係が深まってゆくとき

③解消段階 … メンター関係が終了するとき

メンタリングを効果的に進めるために、初期段階は、推進部門がガイドラインを示してリードするほか、メンターとメンティに報告書の提出や意見交換会の参加を促し、情報の共有化を図るなどのサポートも必要です。

 

4.【メンター制度】に関するQ&A

最後に、メンター制度に関するよくある質問をご紹介します。

 

4-1.手当や助成金は受けられますか?

厚生労働省主管の「人材確保等支援助成金」の中にある、雇用管理制度助成コースでは、メンター制度などを導入し、離職率を低下させることで、助成金が受給できます。メンター制度を導入すれば、必ずしも助成金を受給できるわけではないので、しっかりと受給要件を確認しましょう。また、受給できる金額は定額で57万円です。

 

>>人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)について

 

4-2.研修などはありますか?

いきなりメンター制度を始めるのはハードルが高いと感じる企業も多いでしょう。そのような場合には、メンター制度導入に関する研修を受けるのがおすすめです。当社では、人材育成研修のひとつとして、メンター支援研修を行なっております。メンター支援研修では、メンタリングへの理解や、基本スキルなどをお伝えします。メンター制度導入を検討されている企業のご担当者様は、まずはお気軽に当社までお問い合わせください。

 

5.まとめ

メンター制度についてご紹介しましたが、メンター制度は新入社員や若手社員の離職率を低下させるために、有効な手段となります。

メンター制度の導入は、メンターとなる先輩社員のモチベーションを上げたり、部署間のコミュニケーションが盛んになったりと、組織の活性化にも繋がります。当社では、初めてメンター制度を導入される企業に向け「メンター支援研修」やメンタリング実施前の事前研修を行なっております。メンター制度の導入を検討しているけれど、どのように始めればよいかわからない、より効果的な事前研修を行いたい、といったお悩みを抱えている企業のご担当者様は、ぜひ当社にご相談ください。講義や実践トレーニングを交えながら、メンター制度が効果的に導入されるようサポートいたします。

 

 

 

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